主任挨拶

心理学コース主任 田中 雅史

心理学コースでは、心の複雑な振る舞いを理解するため、多様なアプローチから研究を行っています。私たちの心は、祖先から受け継いだ遺伝情報や身体から理解できる側面もあれば、経験とともに形を変える柔軟な脳の働きとして理解できる側面もあります。また心には、外に現れる行動を通して理解できる側面もあれば、精緻な認知システムとして計算論的に理解できる側面もあるでしょう。さらには、文化や経済といった社会的な現象を通してしか理解できない心の側面もあるかもしれません。

いまや心理学は、生命科学・認知科学・脳神経科学などの自然科学分野、経済学・政治学・文化人類学などの社会科学分野、精神医学・薬理学などの医療分野、統計学・応用数学などの数理科学分野とも密接に関わる学際的な研究領域になっています。こうした現状を踏まえ、心理学コースでは、基本的な実験法・調査法・観察法、統計解析の理論や方法、コンピュータを駆使したデータ分析などを習得しつつ、心理学とつながる膨大な学問分野についても文理を問わず触れることができるよう、綿密にカリキュラムが組まれています。
早稲田大学文学学術院心理学教室の歴史は古く、1882 年(明治 15 年)の東京専門学校(早稲田大学の前身)の創立時より心理学の授業が行われ、 1890 年(明治 23 年)の坪内逍遥博士らによる東京専門学校文学科設立が現在の文学部心理学教室の淵源になりました。この当時、坪内逍遥博士自身も心理学の講義を行ったと伝えられています。その後、文学部心理学教室が 1932 年(昭和 7 年)に設立されてから100年近く、学術、文化、実務に関する数多くの優れた人材を輩出し続けています。
こうした伝統ある心理学教室で、国内のみならず世界で活躍できる人材を輩出すべく、教室の先生方も研究と教育に力を注いでいます。科学的な研究法を学び、論理的に考え、心についての確かな知識を自ら積み重ねていった経験は、学問の世界だけでなく、企業や公共機関で働く上でも、必ず大きな力になるはずです。事実、心理学コースの卒業生は、文理の枠に縛られず様々な分野で活躍しています。みなさんも是非、心理学コースで共に学び、心を探究する刺激的な営みに関わってみませんか。